太陽の国

――序章

「王子っ。これは罠ですっ。どうか思い留まり下さいっ。ジェス王子!」
 ツイール国王宮。
白亜の柱に大理石の床、クリスタルを散らした天井。贅沢という装飾を施されている長い廊下を、二人の男が足早に進んでいた。
 一人は金髪碧眼の、もうすぐ二十歳になろうかという青年。身に纏う豪華な衣装には、このツイール国の紋章が金で刺繍してある。紛れもなく、彼が王族である証。……そう、この容姿端麗な青年こそ、ツイール国のジェス王子である。
 そして、もう一人は立派な髭を生やした壮年の紳士。王子と並んでいるからこそ見劣りはするが、彼が着ている服もそれなりに由緒正しき礼服である。
「そんなことはわかっている! だが、この機会を利用して私とサンエルウム国の結びつきを強化すれば、いかに公爵家とはいえ、あのグラドーの発言を少しは抑えることが出来るのだ! 誰が何と言おうと私は行くぞ!」
「ですがっ! グラドーの奴は王子を亡き者にしようと企んでおりますっ! みすみす死にに行くようなものではありませんかっ!」
「私は死なん! 必ず生きてこのツイール国に帰ってくる! どうしても止めると言うならば、フレッド! この私を殺して止めるがよい!」
 そう言って見つめ返してきたジェス王子の瞳は、一点の曇りもなくギラギラと輝いていた。何もかも包み込むような壮大な青空の瞳というよりは、硬く冷たい鉱物を思わせる、サファイアの双眸。
 その、人間を貫くような視線から王子の覚悟の強さを読み取り、フレッド・ビエンナーレ子爵は止めることは不可能だと悟った。
「…………わかりました。そこまでご決心が固いのであれば、もうお止め致しません。ジェス王子っ、このフレッド・ビエンナーレもお供致しますっ!」
「よくぞ言ってくれた、フレッド。そなたの命、この私がしっかりと預からせてもらおう!」
 そして、日が高く上った南の空を見つめる。
 その先にあるのは、この国よりもさらに巨大な国。南の大国。恵み豊かな太陽の国――。
「行くぞ! サンエルウムへ!!」

第1章

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